現行憲法では「日本を守れない」のか?
2016-05-07


右翼改憲論者の常套句は「現行憲法(特に9条)では日本を守れない」である。

では何から日本を守ることができないのか。
第一は「外国の軍による侵略」
しかし、これは現行憲法でも自衛隊による「個別的自衛権の行使」「防衛出動」で解決できる。
第二は、はっきり右翼たちは言わないけれど、内乱(「左翼」反政府暴力革命)だ。
しかしこれも自衛隊の任務のうち「治安出動」であ足る。
それに「内乱」規模の反政府運動が起きるのは、政府の失政以外にはあり得ず、たいていは反政府側に五分以上の「理」がある。

このように言われると彼らは「日米同盟関係」からの「集団的自衛権」に言及する。
不思議な感覚である。現行憲法はアメリカの押しつけだから気に入らないのに、軍事同盟と駐留米軍は許すのだ。
アメリカは、中国や北朝鮮など児戯に等しいほど、好戦的で世界中に「反米勢力」を抱える国家である。まあ、日本の暴力団で言えば「山口組(分裂前)」と思えばよい。
当時世界をほぼ征服していた「蒙古帝国」ですらできなかった日本の壊滅と占領を、たった四年ほどの戦で達成した絶大な暴力をもった独善的な国だというのに、である。

第一と第二は、そもそも現行憲法の解釈で生まれた「自衛隊」の存在理由そのものだろう。
自衛隊は、外国からは立派な「軍」と思われ、PKO派遣部隊が現地で敵対勢力につかまったら国際法上の「捕虜」の扱いを受けるという、見た目も扱いもバリバリの「軍隊」である。ただ「軍」という名称がないだけだ。
右翼改憲論者は、たぶん大好きであろう「自衛隊」を否定するのだろうか。

第三は「大規模国内テロ」である。
しかし、テロリストが外国人であっても、テロに対処するのは警察であることはアメリカやヨーロッパ「先進国」では当然のこととされる。
911同時多発テロで、アメリカはアフガニスタンにアメリカ軍を投入したが、国内のテロリストに対してはFBIという警察権力が当たっていて、テロリストの逮捕には令状がいるし、司法によって裁かれる。
テロの実行犯(テロリスト)は、まず間違いなく日本人であろう(来日外国人が多くなってもやはり目立つ)、彼らを裁判もなしに殺戮してよいということはあり得ない。

第四は「災害」だそうである。
これは、大地震・大津波、台風、豪雨・洪水、大雪、土砂災害、火山まで、災害の総合商社である日本で、現行憲法が妨げになったことはないことをご存じないと思われる。
内閣が一元的に指揮する(緊急事態条項みたいに)という、現場から離れた遠隔操作が「弊害」以外の何ももたらさなかったのも周知の事実だ。

そもそも「災害」を起こさないようには(台風を逸らしたり火山を活動停止したり)できない。
おきてしまった災害被害を最少にすることと救助救援、復旧復興しかない。
その体制は、国家(政府内閣)が余計な口や手出しをせず、被災現場に金と人員を要求どおりに送り込むことであることは、先述の「周知の事実」として定着している。

最後に、たぶん右翼改憲論者が、一番守りたいのは「国益」。と言っても全国民的利益ではなく、特定の産業資本の海外権益である。

この「権益」がいかに暴力に訴えてでも守りたいものであるかは、アメリカを見ればわかる。
アメリカ軍な守られて(幾分かの威嚇を含む)、あるいは中国人民軍に守られて海外権益をむさぼり食う、その様がいかにもうらやましく、軍隊に守られていない自分たちの投資する日本人が丸裸のようで心細いという不安に突き動かされたがゆえの「守って欲しい」なのだ。

権益・国益というと大層に聞こえるが、要するにヤクザ(=暴力団)の「縄張りとしのぎ」と同じ意味である。ヤクザはこいつを命がけで守りたいがゆえに暴力を厭わない。

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